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リーダーシップの「変える」スキル — 「あるべき姿」ではなく「ありたい姿」を描く

Section titled “リーダーシップの「変える」スキル — 「あるべき姿」ではなく「ありたい姿」を描く”

リーダーシップというと、強いカリスマ性、人を惹きつける話し方、生まれ持った性格のようなものを想像しがちです。

しかし、リーダーシップは一部の人だけが持つ特別な資質ではありません。

リーダーシップとは、現状をより望ましい未来へ「変えていく」ためのスキルであり、後から学び、鍛えることができるものです。

その出発点になるのが、計画を立てることではなく、「どこへ向かうのか」を定めることです。

つまり、ビジョンを描くことです。


1. リーダーシップとは「変える」ことである

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リーダーシップの本質を一言で表すなら、

現状とは異なる未来を描き、そこへ向かって人と組織を変えていくこと

と考えることができます。

単に目の前の仕事を効率よく進めるだけではありません。

「今の延長線上ではなく、どのような未来をつくりたいのか」を考え、その未来に向けて人々が動き出せる状態をつくることがリーダーシップです。

この意味では、リーダーシップは役職ではありません。

部長やマネジャーだから自動的にリーダーになるわけでもなく、正式な管理職でなくても、チームに新しい方向性を示し、人々を動かすことができればリーダーシップを発揮できます。


2. 最初に必要なのは「計画」ではなく「方向性」

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何かを変えようとするとき、私たちはつい最初に計画を作ろうとします。

  • いつまでに実施するか
  • 誰が担当するか
  • 何を実行するか
  • どのようなKPIを置くか

もちろん、これらは重要です。

しかし、その前に決めるべきことがあります。

「そもそも、私たちはどこへ向かうのか」

という方向性です。

どれほど詳細な計画を作っても、目的地が明確でなければ、人は「なぜこれをやるのか」を理解できません。

リーダーシップが最初に行う仕事は、計画の策定ではなく、

方向性を設定し、ビジョンとして言語化すること

なのです。


3. 「変える」なら、どこへ変えるのかを示す

Section titled “3. 「変える」なら、どこへ変えるのかを示す”

「会社を変える」 「チームを変える」 「働き方を変える」 「システムを変える」

こうした言葉だけでは、人は動きません。

必要なのは、

「変えた結果、今とは何が違う状態になるのか」

を示すことです。

たとえば、

業務を効率化する

だけでは、方向性として弱いでしょう。

それよりも、

単純作業に追われる時間を減らし、メンバーがより価値の高い仕事に集中できるチームにする

と表現したほうが、目指している未来が見えます。

「変える」という行為には、必ず行き先が必要です。

その行き先を言葉にしたものが、ビジョンです。


4. 「あるべき姿」と「ありたい姿」は違う

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ここに、マネジメントとリーダーシップの重要な違いがあります。

マネジメント:あるべき姿を実現する

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マネジメントでは、既存の組織やシステムを安定して運営し、期待されている成果を確実に実現することが重要です。

たとえば、

  • 予算を達成する
  • 納期を守る
  • 品質を維持する
  • 障害を減らす
  • コストを管理する

といったものです。

そこには、組織として当然実現すべき「あるべき姿」が存在します。

マネジメントは、その「あるべき姿」に向けて、計画・予算・体制・プロセスを整え、確実に実行していく役割を持ちます。

リーダーシップ:ありたい姿を描く

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一方、リーダーシップが扱うのは、

「私たちは、本当はどうなりたいのか」

という問いです。

そこには、義務から生まれる「〜すべき」だけではなく、

  • こうしたい
  • こうありたい
  • こんなチームにしたい
  • こんな価値を生み出したい

という意志があります。

この 「ありたい姿」を言語化することがビジョンです。


5. マネジメントとリーダーシップ

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両者は対立するものではありません。

組織には、どちらも必要です。

観点 マネジメント リーダーシップ
主な役割 既存の仕組みを安定して動かす 現状を変えて新しい未来へ進む
最初に考えること 計画・予算 方向性・ビジョン
描くもの あるべき姿 ありたい姿
基本的な問い どうすれば確実に実行できるか 私たちはどこへ向かいたいのか
重視するもの 安定性・再現性・効率 変化・方向性・共感
人への働きかけ 役割やプロセスを整える 意味や目的を示して自発性を引き出す

優れた組織運営には、

マネジメントで現在を確実に回しながら、リーダーシップで未来を変えていく

という両方の力が必要です。


優れたビジョンには、人々を同じ方向へ向かわせる力があります。

ビジョンが明確になると、

  • 何を優先すべきか判断しやすくなる
  • 個々の意思決定の方向が揃う
  • 自分の仕事が何につながっているか理解できる
  • メンバーが自分から動く理由が生まれる

ようになります。

つまり、ビジョンは単なるスローガンではありません。

日々の仕事と「実現したい未来」を結びつけるものです。

目の前の仕事が単なる作業ではなく、「ありたい未来へ進むための一歩」だと理解できれば、その仕事の意味は大きく変わります。


何もしなければ、組織は現在の延長線上にある未来へ進みます。

今日と同じように仕事をし、既存のルールを守り、既存の目標を達成し続ければ、その先には自然と「現在の延長としての未来」が待っています。

リーダーが示すべきなのは、それとは異なる未来です。

誰かが意志を持って描かなければ存在しなかった未来。

それが「ありたい姿」です。

たとえば、

  • もっと挑戦できるチーム
  • お互いに助けを求められる組織
  • 運用担当者が単純作業から解放されるシステム
  • 障害対応に追われるのではなく、障害を予防できる組織
  • 技術者が事業そのものを動かす会社

といった未来です。

現在の延長線上だけを考えていては、こうした未来は生まれません。

まだ存在しない未来を言葉にする。

そこから変革が始まります。


8. ビジョンは会社全体だけのものではない

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「会社にはすでに企業理念やビジョンがある。自分のチームで別のビジョンを作る必要があるのか」

という疑問もあります。

しかし、企業全体のビジョンは大きく、個々の仕事からは遠く感じられることがあります。

そこで、会社のビジョンと矛盾しない範囲で、

自分たちのチームが目指す、より身近な「ありたい姿」

を定義することには意味があります。

たとえば、会社全体が「テクノロジーで社会を変える」というビジョンを持っているなら、インフラチームでは、

開発者がインフラを意識せず、安全かつ高速にサービスを提供できる基盤をつくる

というビジョンを掲げることもできます。

抽象的な企業ビジョンと日々の仕事との間に橋を架けることも、リーダーの重要な仕事です。


人を命令だけで動かすことはできます。

しかし、それだけでは「言われたからやる」という状態になりやすくなります。

一方で、

  • なぜこの仕事をするのか
  • どこへ向かっているのか
  • その未来にはどんな意味があるのか

が理解できれば、人は自分自身で考え始めます。

そして、

その未来を実現するなら、こうしたほうがよいのではないか

という提案が生まれます。

これが自発性です。

リーダーの役割は、すべての答えを出して指示することではありません。

メンバー自身が考え、動きたくなる方向性を示すことです。


10. リーダーが自分に問いかけるべきこと

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ビジョンを考えるときには、次のような問いが役立ちます。

  • 今のチームで変えたいことは何か
  • このまま3年続いたら、どのような状態になるか
  • 現在の仕組みで失われているものは何か
  • メンバーが本来持っている力を妨げているものは何か
  • 本当はどのようなチームにしたいか
  • メンバーにどのような働き方をしてほしいか
  • 顧客にどのような価値を届けたいか
  • 今の延長では実現できない未来は何か
  • 自分がリーダーとして言い出さなければ生まれない未来は何か
  • その未来を一文で説明できるか
  • メンバーが聞いて情景を思い浮かべられるか
  • 「やらなければならない」ではなく「実現したい」と思えるか
  • 日々の仕事とそのビジョンを結びつけられるか

自分自身がリーダーシップを実践するうえで、特に覚えておきたいのは次の考え方です。

  1. リーダーシップは生まれ持ったカリスマ性ではなく、習得できるスキルである。
  2. リーダーシップの本質は、現状を「変える」ことにある。
  3. 変える前に、「どこへ向かうのか」を定める。
  4. 最初に作るのは詳細な計画ではなく、方向性=ビジョンである。
  5. マネジメントは「あるべき姿」を確実に実現する。
  6. リーダーシップは「ありたい姿」を描く。
  7. ビジョンは、現在の延長ではない「もう一つの未来」を示す。
  8. ビジョンは、人々が自分から動くための意味と方向性を与える。
  9. 会社全体のビジョンだけでなく、チーム単位でも「ありたい姿」を描ける。
  10. リーダーの仕事は、すべてを指示することではなく、人が自発的に進みたくなる未来を示すことである。

マネジメントは「あるべき姿」を実現する。
リーダーシップは「ありたい姿」を描き、そこへ向かって変えていく。

そして、その第一歩は、

「私たちは、どこへ向かいたいのか?」

を問い、言葉にすることです。


  • 児玉教仁「リーダーシップの最初のステップは『計画の策定』ではない」
    DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー、2026年9月20日
    https://dhbr.diamond.jp/articles/-/14807
  • John P. Kotter, Leading Change, Harvard Business Review Press, 1996.
  • John P. Kotter, John Kotter on What Leaders Really Do, Harvard Business Review Press, 1999.

本ページは、上記記事をきっかけに、リーダーシップについて学んだ内容を自分なりに整理・要約したものです。