コンテンツにスキップ

光ファイバケーブルの種類と選び方

Section titled “光ファイバケーブルの種類と選び方”

光ファイバケーブル(Optical fiber cable)は、光でデータを伝送するケーブルです。サーバとスイッチの接続、ストレージネットワーク、建物間の通信、通信事業者の回線などで使われます。

選定では、ファイバの種類・通信規格・コネクタ・芯数を組み合わせて確認すること が大切です。「LCコネクタだから使える」「シングルモードだから10km届く」という判断だけでは、接続できないことがあります。

この記事の規格・製品資料の確認日は2026年10月28日です。距離は記載した通信方式の代表例であり、実際の設計では使用機器とトランシーバの仕様を確認してください。

光ファイバは、光を導く中心の「コア」と、その周囲の「クラッド」、さらに保護用の被覆から構成されます。一般的なネットワーク配線では、ガラス製のファイバを使用します。

スイッチなどに装着する光トランシーバが電気信号を光信号に変換し、対向側で再び電気信号に戻します。SFP、SFP+、QSFP+、QSFP28などはモジュールの形状やインターフェースに関わる呼称で、光ファイバそのものの種類とは別です。

EthernetとFibre Channelは通信規格、光ファイバは伝送媒体です。FC-SANの「FCケーブル」も、実際には対応する光ファイバケーブルを指すことがあります。同じ形のコネクタを使っていても、Ethernet用とFibre Channel用の機器がそのまま通信できるわけではありません。

マルチモードとシングルモード

Section titled “マルチモードとシングルモード”

「モード」は、ファイバ内を光が伝わるパターンを表します。マルチモードでは複数のモードが伝わり、その到達時間の差によって光パルスが広がる「モード分散」が生じます。これが高速通信で距離を制限する要因になります。

比較項目 マルチモード(MMF) シングルモード(SMF)
主な分類 OM1〜OM5 OS1・OS2など
寸法表記の例 50/125µm、62.5/125µm 9/125µmという製品表記が一般的
主な用途 データセンタ内、サーバ・ストレージ周辺の短距離接続 建物間、構内幹線、通信事業者の回線、データセンタ内接続
通信方式の例 10GBASE-SR、40GBASE-SR4 10GBASE-LR、100GBASE-LR4

50/125µmは、コア径50µm・クラッド径125µmを表します。SMFの9/125µmという表記は選定時によく見かけますが、厳密な光学特性には波長ごとのモードフィールド径なども関係します。

シングルモードに替えるだけで通信速度が上がるわけではありません。 たとえば10GbEのSRとLRは、どちらも10Gbpsの通信方式です。ファイバの種類によって到達距離や利用できる光学方式が変わります。

また、「シングル」は1芯、「マルチ」は多芯という意味ではありません。モードと芯数は独立した分類です。

OMはOptical Multimodeを表すカテゴリです。数字は、そのケーブルで利用できる通信速度を直接表しているわけではありません。

カテゴリ 一般的なコア径 特徴
OM1 62.5µm 既存の古い設備で見られる
OM2 50µm 既存設備で見られ、高速通信時の距離に注意が必要
OM3 50µm レーザー光源を使う高速通信向け
OM4 50µm OM3より高いモード帯域を持ち、対応方式で距離を延ばせる
OM5 50µm 複数波長を利用する短波長のWDMに対応する広帯域マルチモード

OM5は850nmだけでなく953nmでも帯域要件が定められています。ただし、通常の850nmのSR方式でOM4をOM5に替えても、必ず距離が延びるわけではありません。効果はトランシーバの方式に依存します。CiscoのOM4・OM5比較

OM4はOM3向けの用途に、OM5はOM4・OM3向けの用途に利用できます。 ただし、コネクタ・研磨方式・芯数が一致し、使用するトランシーバの対応条件を満たすことが前提です。CommScopeのマルチモードファイバ解説

置き換え・混在の例 考え方
OM3のケーブル全体をOM4に置き換える 既存のOM3向け用途を継続できる。速度は自動的には上がらない
OM4のケーブル全体をOM5に置き換える 既存のOM4向け用途を継続できる。距離が延びるかは通信方式による
OM3の幹線にOM4のパッチコードを接続する 混在は可能だが、経路全体をOM4として扱うことはできない
OM1の幹線にOM3・OM4のパッチコードを接続する 一般的なOM1は62.5µm、OM3・OM4は50µmであり、コア径の違いによる大きな損失が生じるため避ける

同じ50µmでも、OM2・OM3・OM4・OM5は帯域特性が異なります。混在時は低いカテゴリ側を基準に保守的に設計し、各区間の長さ・帯域・損失が通信方式の条件を満たすか確認します。一部だけ上位カテゴリに替えても、リンク全体の性能が上位カテゴリになるわけではありません。基本は同じカテゴリで統一します。Fluke Networksの混在時の注意点

次の表は代表的な対応距離です。パッチコードを含むリンク全体の長さと損失を確認します。

ファイバ 10GBASE-SR 40GBASE-SR4 100GBASE-SR4
OM1 33m この表の対象外 この表の対象外
OM2 82m この表の対象外 この表の対象外
OM3 300m 100m 70m
OM4 400m 150m 100m
OM5 400m 150m 100m

出典:Cisco 10GBASE SFP+、Cisco 40GBASE QSFP、TIA FOTC 100GBASE-SR4。OM1の33mは850nmで200MHz·km、OM2の82mは500MHz·kmの条件です。古いファイバは同じコア径でも条件が異なるため、径だけで判断しません。

「100GbEならOM3で100m」といった速度だけの表現は不十分です。100GBASE-SR4と100GBASE-SR10などでは条件が異なるため、速度に加えてSR4などの方式名まで確認します。

シングルモードの規格:OS1・OS2

Section titled “シングルモードの規格:OS1・OS2”

OSはOptical Singlemodeを表すカテゴリです。OS1とOS2は損失特性などが異なり、一般にOS2は低損失の配線に用いられます。

「OS1は屋内専用、OS2は屋外専用」とは限りません。OS2にも屋内用や屋内外兼用の製品があります。屋外設置への適性は、外被の耐候性、防水構造、敷設方法なども含めて判断します。屋内外兼用OS2の例として、Legrandの製品仕様書があります。

通信方式 速度 代表的な距離 通信に使う芯数
1000BASE-LX 1Gbps SMFで5km 2芯
10GBASE-LR 10Gbps 10km 2芯
40GBASE-LR4 40Gbps 10km 2芯
100GBASE-LR4 100Gbps 10km 2芯

出典:TIA FOTCのシングルモードEthernet一覧。製品によっては1Gbpsで10kmに対応しますが、1000BASE-LXの標準的な5kmと製品独自の対応距離は区別してください。

OS2であっても距離は無制限ではありません。トランシーバが許容する損失に対して、ファイバ・コネクタ・融着点の損失が収まる必要があります。これを確認するのが光損失予算(光パワーバジェット)の設計です。

OS1で使っていた用途にOS2を使うことは、一般に可能です。 OS2の製品にはOS1の要件も満たすものがあります。たとえば、LegrandのOS2仕様書はOS1要件への適合も明記しています。

ただし、OS1・OS2はケーブルの性能カテゴリであり、通信プロトコルの世代ではありません。置き換え時は、トランシーバが指定するITU-T G.652などのファイバ仕様、使用波長、コネクタ・研磨方式、経路全体の損失を確認します。

OS1の幹線にOS2のパッチコードをつないでも、幹線の損失特性は改善されず、経路全体がOS2になるわけではありません。逆に、OS2を前提に設計したリンクをOS1で置き換えられるとも限りません。

なお、MMFとSMFの間には、このような下位互換性はありません。 OMからOSへの変更は、対応する光トランシーバも含めて見直します。

コネクタ 特徴 使用例
LC 小型でラッチを持つ。2個をまとめたデュプレックス形状もある SFP系トランシーバ、サーバ、スイッチ、光パッチパネル
SC LCより大きく、押し込んで接続し、引いて外す構造 ONU、メディアコンバータ、光パッチパネル
MPO 1つのコネクタで複数芯をまとめて接続する 並列光伝送、多芯の幹線配線

LCはMMFにもSMFにも使われます。SCも現役の設備で使われており、形状だけで用途や性能は決まりません。MTPはMPOに互換性を持つ製品の商標として使われる名称です。

LC:2芯の例 SC:1芯の例 MPO:多芯の例
2個の小型コネクタを並べたLCデュプレックスコネクタ 黄色いケーブルに接続された青色のSCシンプレックスコネクタ 複数の光ファイバをまとめて接続するMPOコネクタ

外被やコネクタの色は製品によって異なります。

MPOでは芯数に加えて、ガイドピンの有無、キーの向き、極性を確認します。40GBASE-SR4や100GBASE-SR4は送信4芯・受信4芯の計8芯を使い、12芯MPOの中央4芯を使わない構成があります。MPOの総芯数と実際に通信に使う芯数は一致するとは限りません。

また、40GbE・100GbEにMPOが必須というわけではありません。LR4などは波長多重により2芯のLCで通信できます。

コネクタの形が同じでも、端面研磨の仕様が異なる場合があります。UPCと、斜めに研磨するAPCは区別して扱い、直接かみ合わせないでください。トランシーバやパッチパネルが指定する研磨方式に合わせます。

外被色も識別の手がかりになります。OM3はアクア、OM4はアクアや紫、OM5は黄緑、OS2は黄色などが代表例です。ただし、最終的にはケーブルの印字・型番・仕様書で確認してください。AMDの光ケーブルガイド

1芯と2芯:芯数と通信方向の違い

Section titled “1芯と2芯:芯数と通信方向の違い”

「芯」は1本の光ファイバを数える単位です。パッチコードのSimplexは通常1芯、Duplexは通常2芯の構成を指します。この表現と、通信方式の単方向・全二重は分けて考えます。

構成 送受信の方法 注意点
2芯 送信用と受信用に各1芯を使う 一般的なデュプレックス光リンクではTxとRxを対応させる
1芯のBiDi 異なる波長で送受信し、同じ1芯を共有する 送受信波長が対になるトランシーバを使う
並列光伝送 複数芯をレーンに分けて送受信する 芯数、レーンの対応、極性を確認する

BiDiはBidirectional(双方向)の略です。WDM(波長分割多重)を使えば、1芯でも送受信を同時に行えます。1芯だから1Gbpsまでという制限はなく、たとえば50Gbpsの1芯BiDi製品もあります。同じ型番を2個選べばよいとは限らず、U/Dなど指定の組み合わせを確認します。

Txは送信、Rxは受信です。通常の2芯リンクでは、次のように送信側から対向の受信側へ光が届く必要があります。

機器A 機器B
Tx ─────── ファイバ1 ───────→ Rx
Rx ←────── ファイバ2 ──────── Tx

Tx同士・Rx同士につながっていると、正しく受光できません。送受信の対応関係を「極性(polarity)」と呼びます。

パッチパネルや中継を挟む場合は、パッチコード単体ではなく、機器間の経路全体でTx→Rxになっているか を確認します。パネルの有無だけで接続の成否が決まるわけではありません。

パッチパネル2台を経由してTxとRxが対応する正常例、1台を経由してTx同士になる不一致例、機器B側の2芯を入れ替えて修正した例

パッチパネルは受動的な接続点なので、図中ではTx/Rxではなくポート番号1・2で表しています。線の交差は芯の接続関係を表し、交点で光を分岐・合流させる意味ではありません。

極性不一致を確認できた場合は、製品の手順に従って片側の送受信の対応を入れ替えます。MPOではレーン配置も関係するため、LCのように2本を交換する感覚で扱わず、配線設計と極性方式を確認してください。

クロスコネクトを挟む配線の参考例

Section titled “クロスコネクトを挟む配線の参考例”

クロスコネクト区間と両端のパッチコードについて、片側でクロスさせる構成など3種類の接続例を示した図

図では中央のクロスコネクト区間をストレートとして、両端の配線との組み合わせを示しています。実際のサービスの配線を一律に示すものではないため、利用時は事業者の引き渡し仕様と両端のポート割り当てを確認してください。

ブレークアウトは、1つの高速ポートを複数の低速ポートとして利用するときなどに使う分岐接続です。

構成例 分岐後の接続
対応する40G QSFP+ 4本の10G SFP+接続
対応する100G QSFP28 4本の25G SFP28接続

光接続では、対応する並列光トランシーバとMPOからLCへのファンアウトケーブルを組み合わせる方法があります。一方、モジュールとケーブルが一体になったAOCや、銅線を使うDACのブレークアウト製品もあります。

1個のMPOコネクタから4組のLCデュプレックスコネクタに分岐する光ブレークアウトケーブル

MPO側でまとめた8芯を、LC側の4組の2芯に分ける構成を確認できます。対応する並列光方式では、それぞれの2芯を1つの送受信ペアとして使います。

ケーブルを分岐させるだけで、どのポートでも分割できるわけではありません。 スイッチのポート、OS、トランシーバがブレークアウトをサポートし、必要なポート分割設定ができることを確認します。波長多重のLR4を受動的なLC分岐だけで4つの独立したリンクにすることもできません。

  1. 必要な速度と配線距離を決める。 ラック間の50mと、建物間の2kmでは候補が変わります。
  2. 両端の機器が対応する通信方式を確認する。 ポート形状だけでなく、トランシーバの規格と互換性を調べます。
  3. 経路全体のファイバを確認する。 MMF/SMF、OM/OS分類、既設幹線、パッチコードを含めます。
  4. コネクタ・研磨・芯数・極性を合わせる。 BiDiでは対向波長、MPOではピンとレーン配置も確認します。
  5. 距離と損失、設置条件を確認する。 コネクタの接続損失、曲げ半径、屋内外の適性も選定条件です。

たとえば50mの10GbE接続なら、対応する10GBASE-SRトランシーバとOM3/OM4の2芯LCケーブルが候補になります。2kmの10GbE接続なら、対応する10GBASE-LRとSMFを候補にし、損失を確認します。同じ50mでも100GBASE-SR4を使うなら、並列光用の配線が必要です。

まずポートの有効化状態、速度、トランシーバの対応状況を確認します。そのうえで、次の順に配線を切り分けると整理しやすくなります。

  • ファイバ種別、対向トランシーバ、BiDiの波長ペアが正しいか。
  • Tx/Rxの極性やMPOの配線が正しいか。
  • コネクタ端面が汚れていないか。適切な検査器で確認し、必要に応じて清掃後に再検査する。
  • ケーブルが強く曲げられたり、挟まれたりしていないか。
  • DOM/DDM対応機器で送受光レベルを確認できるか。受光不足だけでなく、受信上限の超過にも注意する。

受光値が範囲内でも、速度やFECの設定が合わなければリンクが成立しない場合があります。光が来ていることと、通信できることは同じではありません。Cisco MerakiのSFP切り分けガイド

光ポートやケーブルの端面を直接のぞかないでください。見えない波長の光でも、受光確認には専用の測定器を使用します。